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  • 悲鳴をデータ化する 白菊祭で最大動員数を記録した実験的お化け屋敷が浮き彫りにした恐怖と笑いの紙一重

    2025年11月5日 カテゴリー:キャンパスライフ・認知科学研究 キャンパスの銀杏並木が鮮やかな黄金色に染まった11月1日から3日にかけて、本学の年間最大行事である「白菊祭(Shiragiku Festival)」が開催されました。 近隣住民や受験生を含め、過去最高となる延べ3万2千人の来場者を迎えた今年の学園祭。模擬店の焼きそばの香りが漂う中、南館の地下スタジオには、開場直後から異例の「180分待ち」という長蛇の列が出現しました。 人々が並んででも体験したかったもの。それは、情報理工学部の認知科学ラボと、高等部演劇部が共同で制作した実験的アトラクション「Labyrinth of the Amygdala(扁桃体の迷宮)」です。 「最も怖いタイミング」をAIが計算する このお化け屋敷のコンセプトは、「恐怖の個人最適化」です。 従来のお化け屋敷は、誰に対しても同じタイミングで仕掛けが作動します。しかし、恐怖を感じる「間(ま)」は人によって異なります。ある人は静寂に怯え、ある人は突然の音に驚きます。 プロジェクトリーダーの大学院修士1年、大島タケルさんは、入場する客の手首に装着したウェアラブルセンサーを通じ、心拍数と皮膚電気活動(発汗)をリアルタイムで計測するシステムを構築しました。 「人間が最も恐怖を感じるのは、心拍数が上がりきった時ではなく、ふと緊張が緩んだ『弛緩(しかん)』の瞬間です。AIがそのタイミングを予測し、無線で指示を飛ばして、最適な瞬間に『脅かし』を発動させる仕組みを作りました」 この高度なシステムの裏側で、実際に「お化け」を演じたのは、高等部演劇部の生徒たちです。 彼らはインカム(無線機)から流れる「ターゲットB、心拍低下。3秒後に突入せよ」というAIの無機質な指令に従い、プロ顔負けの演技力で客を驚かせる役割を担いました。 システム遅延が生んだ「意図せぬコメディ」 しかし、初日の午前中はトラブルの連続でした。 予想以上の来場者数により、会場内のWi-Fi環境が混雑し、センサーデータからAIの指令までに約2秒のラグ(遅延)が発生してしまったのです。 その結果、何が起きたか。 客が通り過ぎ、ほっとして完全にリラックスし、次の角を曲がった後に、何もない空間に向かってお化け(高校生)が全力で飛び出すという現象が多発しました。 恐怖の絶頂であるはずの場面は、一転してシュールなコメディと化しました。出口から出てくる客は、青ざめているのではなく、お腹を抱えて笑っていました。 「最初は泣きそうになりました。僕たちの計算では、完璧な恐怖体験になるはずでしたから」 演劇部部長の高等部2年生、川上サクラさんは振り返ります。 「でも、大学生の先輩たちが必死でノートPCを叩いて、『ごめん、処理を軽量化する!予測モデルを切り替える!』と叫んでいる姿を見て、私たちもアドリブでつなごうと腹を括りました」 恐怖と笑いは、脳内では親戚? 午後になり、エンジニアチームが通信プロトコルを軽量化したことで、ラグは解消されました。 すると今度は、会場内から本物の「悲鳴」が聞こえ始めました。AIの予測精度と、高校生の演技力が噛み合った瞬間、アトラクションは本来の姿を取り戻しました。 興味深いのは、実験後に収集されたアンケートデータです。 システムが誤作動して「笑ってしまった」回と、正常に作動して「怖かった」回で、顧客満足度に有意な差がなかったのです。 これについて、指導教員の心理学専攻・バウマン准教授は次のように分析します。 「恐怖(Fear)とユーモア(Humor)は、どちらも『予測とのズレ』から生じる情動であり、脳科学的には非常に近い領域にあります。学生たちの失敗は、期せずして『緊張と緩和』というエンターテインメントの真理を実証することになりました」 祭りのあと、データは論文へ 3日間で約1,200人が体験したこのプロジェクトにより、テラバイト級の「驚愕反応データ」が蓄積されました。 これらのデータは、個人情報を伏せた上で解析され、来春の日本認知科学会で「生体信号に基づく情動予測モデル」として発表される予定です。 最終日のフィナーレ、後夜祭のステージに立った大島さんと川上さんら合同チームは、学長賞を受け取りました。 「来年は、笑いなしの、本当の恐怖をお届けします」 そう宣言した大島さんの顔は、研究者というより、悪戯好きな少年のようでした。 屋台の撤収作業が進むキャンパス。 祭りの熱気は去りましたが、TUSUの学生たちが得た「計算通りにいかない人間の面白さ」という知見は、彼らの研究の中に確かに残っています。 (文:TUSU広報室 / 写真:新聞部)

  • 剣道の「気」は0と1で記述できるのか 体育の日に道場で行われたAI解析実験が示した武道の深淵と限界

    2025年10月14日 カテゴリー:スポーツ科学・伝統文化研究 秋雨が上がり、金木犀の香りが漂い始めた10月中旬の駒場キャンパス。 「スポーツの日」の振替休日となったこの日、普段は静寂に包まれている本学の武道場「修練館」から、裂帛(れっぱく)の気合いと竹刀が交わる音が響き渡っていました。 そこで行われていたのは、試合ではありません。情報理工学部の生体計測ラボと、創部50年の歴史を持つ体育会剣道部による共同実験プロジェクト「Digital Dojo(デジタル道場)」の最終計測会です。 彼らが挑んだ問いは、あまりにも哲学的で、かつ工学的でした。 「剣道における有効打突の条件『気剣体一致』の『気』は、センサーで検知可能か?」 「心」が見えないAIの苦悩 実験のセットアップは、見るからに異様でした。 伝統的な藍染の稽古着をまとった剣道部主将(4年・法学部)の身体には、計16個の加速度センサーと、心拍変動(HRV)を計測するウェアラブルデバイスが装着されていました。対峙するのは、同じくセンサーを装備した師範代です。 プロジェクトを主導した情報理工学部の陳(チェン)准教授は、実験の背景をこう語ります。 「AIによるスポーツ解析は、野球やサッカーでは既に実用化されています。しかし、剣道は違います。単に竹刀が当たっただけでは一本にならず、『充実した気勢』が必要とされる。この主観的とも言える『気』を数値化できなければ、武道のAI判定は不可能です」 春からの予備実験では、失敗の連続でした。 画像解析AIは、竹刀が面に当たった瞬間だけを切り取って「有効」と判定しましたが、高段者の審判は「今のは心が死んでいる」として旗を上げませんでした。 AIには、打突の瞬間の物理現象は見えていても、その前後の「攻め」や「残心(ざんしん)」が見えていなかったのです。 防具とケーブルの物理的闘争 この日の実験も、トラブルから始まりました。 激しい打ち合いの中で、主将の面の下に取り付けた呼吸センサーが汗で滑り落ち、何度も断線しました。 「先生、これじゃあ試合に集中できません。コードが気になって、どうしても動きが縮こまってしまうんです」 主将の苛立ち混じりの訴えに、エンジニアチームの学生たちは青ざめました。 「非侵襲(ひしんしゅう)」、つまり選手の邪魔をしない計測がいかに難しいか。 学生たちは急遽、予備のテーピングと3Dプリンタで出力した特製クリップを使い、休憩時間を惜しんで配線を固定し直しました。最先端の研究は、こうした泥臭い手作業に支えられています。 同期する二つの心臓 午後3時、機材トラブルを乗り越え、ようやく本格的な立会いが始まりました。 静寂の中、主将が「メェーン!」と飛び込み、師範の面を捉えます。審判役のOBが鮮やかに旗を上げました。 モニターを見ていた大学院生が、小さな声を上げました。 「来ました、シンクロです」 リアルタイムで表示された波形データには、驚くべき現象が記録されていました。 有効打突が決まる0.5秒前、主将と師範の心拍リズムが、まるで示し合わせたかのように完全に同期(カップリング)し、その直後に主将の心拍だけが急激にピークに達していたのです。 逆に、打突が当たっても審判が旗を上げなかったシーンでは、この同期現象は見られませんでした。 「気」の正体の一つは、対峙する二者の「生理的同期」にあるのではないか。 それは、古来より言われる「阿吽の呼吸」が、単なる比喩ではなく、生物学的な現象であることを示唆するデータでした。 残された「美しさ」という謎 実験後、汗を拭う主将に、解析チームは「心拍同期率98%」というデータを見せました。しかし、主将は少し困ったような顔で笑いました。 「数字ですごいと言われても、正直ピンと来ませんね。僕が感じていたのは、師範の懐(ふところ)にスッと吸い込まれるような感覚だけでしたから」 データは現象を説明できても、その瞬間に選手が感じる高揚感や、打突の美しさそのものを記述することはできません。 陳准教授もまた、謙虚に語ります。 「私たちはようやく『気』の入り口に立ったに過ぎません。AIは今日、剣道が単なる棒叩きではないことを学習しました。しかし、その奥にある精神性を理解するには、まだ長い時間がかかるでしょう」 伝統をアップデートする この研究成果は、将来的に遠隔地での剣道指導や、審判補助システムへの応用が期待されています。 しかし、TUSUの学生たちがこの日学んだのは、そうした実利だけではありません。 自分たちが学ぶ最先端技術を使ってもなお、解明しきれない深淵な文化が自国にあるということ。そして、その文化を守り継いできた人々の身体知へのリスペクト。 秋の夕暮れ、道場に響く「ありがとうございました!」という凛とした挨拶は、データには還元できない人間の尊厳を物語っていました。 (文:TUSU広報室 / 撮影:スポーツ科学研究会)

  • 闇の中の光を頼りに 渋谷・駒場エリアで行われた大規模夜間避難シミュレーションで学生チームが提示した「逃げない」という選択肢

    2025年9月9日 カテゴリー:社会貢献・都市防災研究 台風14号が去り、少し肌寒い風が吹き始めた9月上旬の夜。 普段は学生たちの活気で満ちる駒場キャンパスと、そこから続く渋谷方面への裏道が、奇妙な静寂と幻想的な青い光に包まれました。 9月1日の「防災の日」に合わせ、東京ウグイスシラギク国際大学(TUSU)は、目黒区および渋谷区と連携し、首都直下型地震の発生を想定した「夜間広域避難実証実験(Night-time Evacuation Drill 2025)」を実施しました。 参加したのは、近隣住民と学生ボランティアを含めた約800名。しかし、これは従来の「防災頭巾をかぶって整列する」訓練とは一線を画すものでした。 そこで試されたのは、情報理工学部と芸術工学部が共同開発した、**「パニックを鎮静化するための光のアルゴリズム」**です。 最短ルートが「正解」とは限らない プロジェクトの発端は、2024年の能登半島地震の教訓でした。 「災害時、AIは地図上の最短ルートを避難経路として提示します。しかし、街灯が消えた夜の被災地で、瓦礫が散乱する狭い路地を、スマホの画面だけを頼りに歩けるでしょうか?」 都市安全工学を専攻する博士後期課程のリーダー、マイク・アンダーソンさんはそう問いかけます。 研究チームが事前に行ったVRシミュレーションでは、衝撃的なデータが得られていました。 AIが「安全かつ最短」と判断した裏道ルートに対し、被験者の60%が「暗くて怖い」という理由で進入を拒否し、結果として危険な大通りに人が殺到してしまったのです。 人間の恐怖心は、アルゴリズムの合理性を凌駕する。 この課題に対し、芸術工学部のインタラクションデザインチームが提案したのが、「アンビエント・ガイダンス(環境による誘導)」というアプローチでした。 街そのものをインターフェースにする 実験当日、午後19時。 「震度6強の地震発生、停電により主要道路の信号機停止」というアナウンスと共に、キャンパス周辺の街灯が一斉に消灯されました(安全のため保安灯は維持)。 闇に包まれた瞬間、参加者のスマートフォンアプリが一斉に振動しましたが、画面には地図は表示されません。代わりに、彼らの足元を照らしたのは、学生たちが事前に設置した数千個の自律型IoTランタンと、校舎の壁面に投影されたプロジェクションマッピングでした。 「走らないでください。光の波に合わせて歩いてください」 壁面には、テキストではなく、ゆっくりと流れる青白い光の波紋が投影されました。 それは、避難を急かす赤い警告色ではなく、副交感神経を優位にし、心拍数を下げる効果がある「シラギク・ブルー」と呼ばれる特殊な色温度の光です。 予期せぬ「渋滞」と、そこからの学び しかし、実験はすべてが計画通りに進んだわけではありません。 開始15分後、駒場野公園の入り口付近で予期せぬ人の滞留が発生しました。 IoTランタンの一つが通信エラーを起こし、点滅リズムが乱れたことで、参加者が「ここから先は危険なのではないか」と疑心暗鬼になり、足を止めてしまったのです。 対策本部のモニターを見ていた学生たちは青ざめました。 「光のリズムが少しズレただけで、信頼がこれほど簡単に崩れるとは想定外でした」(情報理工学部4年・佐藤ユイさん) 現場にいた誘導班の学生が、即座に手持ちのライトで「大丈夫です、ゆっくり進んで!」と声を掛け、何とかパニックは回避されました。 「スマートシティ」の脆さが露呈した瞬間でしたが、同時に、最後は「人の声」が安心のアンカーになるという、極めて人間臭い事実も明らかになりました。 「逃げる」から「留まる」勇気へ 今回の実験のもう一つの大きな成果は、「帰宅困難者」の制御です。 災害時、多くの人が一斉に帰宅しようとすることで群衆雪崩が起きます。今回のシステムでは、一部のエリアの光を「暖色(オレンジ)」に変化させ、「ここは安全な滞留場所です。今は動かないでください」というメッセージを、言語を使わずに伝達することに成功しました。 実験終了後のアンケートでは、参加者の88%が「恐怖を感じずに避難できた」と回答しました。特に、日本語がわからない外国人留学生からは、「言葉のアナウンスが聞き取れなくても、光についていくことで安心できた」という高い評価を得ました。 駒場の夜が教えてくれたこと 講評において、防災心理学の権威である外部有識者はこう述べました。 「君たちが作ったのは、避難誘導システムではない。都市という巨大な空間を使った『集団カウンセリング』だ」 合理的な最短距離ではなく、遠回りでも「心が落ち着く道」を選ぶこと。 それは、効率を追い求めてきた近代都市工学に対する、TUSUからのアンチテーゼでもあります。 学生たちは今、今回の通信エラーのデータを解析し、システムを修正しています。 来年の9月、この「命を守る光」は、キャンパスを飛び出し、実際の渋谷のスクランブル交差点で実装される計画が進んでいます。 暗闇の中でこそ、人の知性は優しく輝く。そんな希望を感じさせる一夜でした。 (文:TUSU広報室 / 写真:都市防災研究会)

  • 梅雨の湿気を「旨味」に変える 駒場の空で育ったAI野菜が初収穫され学生食堂で限定提供開始

    2025年6月23日 カテゴリー:SDGs・学生プロジェクト 連日の雨模様が続く東京・目黒区。 どんよりとした雲が垂れ込める中、東京ウグイスシラギク国際大学(TUSU)の南館屋上にある「Komaba Sky Farm(駒場スカイファーム)」だけは、鮮やかな緑色に輝いていました。 本日昼休み、この屋上農園で収穫されたばかりのレタスとバジルを使った特別メニュー「駒場グリーン・ジェノベーゼ」が学生食堂「KEYAKI」で提供され、用意された200食がわずか15分で完売するという盛況を見せました。 しかし、この緑の葉が皿に載るまでの道のりは、文字通り「泥沼」との戦いでした。 アルゴリズムが読めなかった「カビ」の恐怖 本プロジェクトは、環境都市工学部と情報理工学部の有志学生チーム「Root & Code(ルート・アンド・コード)」が2024年秋から進めてきたものです。「都市の未利用空間における食料自給率の向上」を掲げ、IoTセンサー制御による水耕栽培システムの構築に挑みました。 順調に見えたプロジェクトに暗雲が立ち込めたのは、6月に入り梅雨前線が停滞し始めてからのことです。 気温24度、湿度90%以上。カビや病気が最も発生しやすいこの過酷な環境に対し、学生たちが設計したAIモデルは当初、無力でした。 「センサー上の数値は『適正範囲』を示していたんです。でも、現場に行ってみると、レタスの根が茶色く変色し始めていました。いわゆる根腐れです」 プロジェクトリーダーの大学院1年(生物情報学)、イ・ジスさんは当時の焦りを隠しません。 「日照不足を補おうとしてLEDの照射時間を延ばしたのが裏目に出ました。植物が『徒長(とちょう)』してひょろ長くなり、さらに通気性が悪化して蒸れてしまったのです。教科書通りのアルゴリズムが、日本の梅雨という『魔物』に負けた瞬間でした」 高等部園芸部という「アナログな救世主」 システムのエラーログを見つめて立ち尽くす大学生たちを救ったのは、意外な協力者でした。 同じキャンパス内にある高等部(High School)の園芸部の生徒たちです。普段、校庭の隅で土と向き合っている彼らは、屋上のプランターを見るなり即座に言いました。 「先輩、これ、風が止まってますよ。数字じゃなくて、葉っぱが息苦しそうにしてる」 データサイエンス専攻の学生たちは、「風速」を数値としてしか見ていませんでしたが、高校生たちは「葉の揺れ方」という肌感覚で異常を察知したのです。 この指摘を受け、チームは急遽プログラムを書き換えました。一定の間隔で送風ファンを回すのではなく、カメラ画像から葉の密集度を解析し、局所的に強い風を送って湿気を飛ばす「マイクロ・サーキュレーション」システムを3日で実装しました。 デジタルな頭脳と、アナログな身体知。この二つが噛み合ったことで、壊滅の危機に瀕していたレタスたちは、奇跡的に持ち直しました。 「味」という最後の審判 そして迎えた収穫の日。 収穫されたレタスは、スーパーに並ぶものよりも少し小ぶりで、形も不揃いでした。 試食会に参加した藤沢カオリ学長は、一口食べて微笑み、そして正直な感想を述べました。 「うん、少し苦いですね。でも、その苦みの中に、君たちが雨の中で格闘した味がします。とても生命力を感じる味です」 完璧な甘さではありませんでした。日照不足の影響は隠しきれず、茎には野性味あふれる苦みが残っていました。しかし、学生たちはその評価を誇らしげに受け入れました。 「AIを使えば、工場のような均一な野菜が作れると思っていました。でも、僕たちが作ったのは工業製品ではなく『命』だったんです。この苦みこそが、僕たちの研究成果(データ)です」(情報理工学部3年・田中翔太さん) 「食べる」データ・ジャーナリズム 今回のプロジェクトでは、芸術工学部の学生による「Edible Data(食べられるデータ)」というユニークな試みも行われました。 食堂で提供されたパスタの皿には、QRコードが添えられており、それを読み込むと、その野菜が育った30日間の気温、湿度、そして学生たちがトラブル対応した履歴が、美しいモーショングラフィックスとして表示される仕組みです。 ただ消費するのではなく、その野菜が辿ったドラマを味わう。 学生食堂の一角で起きたこの小さなムーブメントは、食とテクノロジー、そして教育の新しい関係性を提示しています。 スカイファームの次なる挑戦は「真夏の酷暑」。 コンクリートの照り返しが50度を超える8月に向け、彼らは今、遮熱ネットの自動展開システムの開発に汗を流しています。 TUSUの屋上は、まだしばらくの間、眠らない実験室となりそうです。 (文:TUSU広報室 / 撮影:写真部)

  • 駒場の新緑に映えるサイバネティック茶会 ロボティクスと美学が交差する新たな身体性の探究

    2025年5月22日 カテゴリー:研究成果・キャンパスニュース 五月晴れの空の下、駒場キャンパスの奥に佇む日本庭園「静寂庭(Seijaku-tei)」において、一風変わった茶会が催されました。 そこにあるのは、朱色の野点傘(のだてがさ)と、畳の縁台。そして、正客の前に鎮座するのは、着物を着た人間ではなく、銀色に鈍く光る7軸制御の産業用ロボットアームでした。 情報理工学部(Robotics Track)と芸術工学部、そして本学の茶道部が半年間かけて準備してきた産学文化連携プロジェクト、通称「Cyber-Nodate(サイバネティック野点)」の公開実証実験です。 「心」をコードに変換する難題 「最初は、単にお湯を注いで抹茶を撹拌すればいいと思っていました。でも、茶道部の師範に『それはお茶ではない、ただの緑色の液体だ』と一喝されました」 プロジェクトリーダーを務めるロボティクス専攻修士1年の相馬ケンタさんは、開発当初の苦悩をそう語ります。 工学的な「最適解」は、均一に、素早く、泡立てることです。しかし、茶道が求めるのは「点前(てまえ)」と呼ばれる一連の所作の美しさと、客に対する「もてなしの心」です。 ロボットアームにどうやって「心」を実装するか。 チームが直面したのは、プログラミング言語Pythonの構文エラーではなく、「侘び寂び」という定義不可能な美学の壁でした。 茶筅を握りつぶした日 開発は難航を極めました。 4月の実験では、ロボットが力の加減を誤り、高価な奈良高山産の茶筅(ちゃせん)を握りつぶしてしまう事故が発生しました。 「ロボットには『優しさ』というパラメータがありません。トルクセンサーの数値を0.1ニュートン単位で調整し、茶筅が茶碗の底に触れるか触れないかの『すり足』のような動きを再現するのに、丸1ヶ月かかりました」(相馬さん) ここで重要な役割を果たしたのが、芸術工学部の学生たちによるモーションキャプチャ解析でした。 茶道の達人の動きを3次元データ化し、加速度ではなく「間(ま)」を分析。お湯を注ぐ瞬間のわずかな「溜め」や、茶碗を差し出す時の緩やかな曲線を、ロボットの軌道計画(Trajectory Planning)に落とし込みました。 デジタルとアナログが融和した一服 そして迎えた本日。 招待された目黒区の地域住民や、海外からの客員研究員が見守る中、ロボットアーム「HIKARI-01」による点前が始まりました。 ウィーン、というわずかなモーター音と共に、アームが柄杓(ひしゃく)を構えます。その動きは、人間よりも幾分遅く、しかし不気味なほど滑らかでした。 センサーが湯の温度を82度に検知すると、手首にあたる部分がしなやかに回転し、釜から湯を汲み上げます。 茶筅を振る音だけが、静かな庭園に響きました。シャカシャカという音は、最初の15秒は激しく、最後の5秒は水面を撫でるように静かに。 差し出された薄茶(うすちゃ)を口にした地元の高齢女性は、少し驚いた表情でこう感想を漏らしました。 「機械が入れたお茶なんて無機質なものだと思っていたけれど、不思議とまろやかで。まるで、少し不器用だけど真面目な学生さんが一生懸命点ててくれたような、そんな味がします」 不完全さが生む、新しい「人間らしさ」 もちろん、課題も残りました。 風速3メートルの風が吹いた際、ロボットの視覚センサーが野点傘の揺れを「障害物」と誤認し、動作が30秒ほど停止する場面がありました。 しかし、その「間」さえも、参加者たちは「ロボットが緊張しているようだ」と好意的に受け止めていました。 指導教員であるメディア・アート専攻の松田教授は、このプロジェクトの意義をこう総括します。 「私たちはロボットで人間を代替したいわけではありません。テクノロジーが『所作』という文化的なコードを学習したとき、そこにどのような新しい身体性が生まれるのか。今日の実験で、機械の不完全さが逆に人々の共感を呼ぶという、興味深い『人間・ロボット相互作用(HRI)』のデータが得られました」 「Cyber-Nodate」は今後、動作アルゴリズムを改良し、秋にイタリア・ミラノで開催されるデザインエキスポへの出展を目指します。 伝統を守るとは、過去を保存することではなく、最先端の技術を用いてその本質を再解釈し続けること。 駒場の新緑の中で点てられた一服の茶は、TUSUが目指す未来の味を予感させるものでした。 (文:TUSU広報室 / 協力:裏千家淡交会目黒支部)

  • 教室は駒場の森全て 新入生1200名が挑むAIと生物多様性の対話型プロジェクトが波乱の幕開け

    2025年4月18日 カテゴリー:教育カリキュラム・キャンパスライフ 新緑が目に眩しい4月の駒場キャンパス。 例年であれば、講義室でガイダンス資料をめくる新入生の姿が見られる時期ですが、今年の東京ウグイスシラギク国際大学(TUSU)の風景は少し異なっています。 2025年度より全学部1年次必修科目として導入された新カリキュラム「Komaba Field Informatics(駒場フィールド情報学)」の最初の実習が、今週行われました。この授業の目的は、キャンパスおよび隣接する駒場野公園の生態系を、最新のIoTセンサーと人間の五感の両方を使ってモニタリングし、「生物多様性のデジタルアーカイブ」を構築することです。 しかし、そのスタートは、決してスマートなものではありませんでした。 「データが取れない」という洗礼 「先生、センサーが反応しません。土がついた手で触ったからでしょうか?」 「この鳴き声、AI判定だと『ウグイス』って出るんですけど、どう聞いてもカラスですよね?」 初回のフィールドワークが行われた4月15日、キャンパス内の森(通称:シラギクの杜)からは、新入生たちの困惑した声が上がっていました。 このプロジェクトでは、学内50箇所に設置された小型のエッジAIマイクを用い、鳥の鳴き声や昆虫の羽音をリアルタイムで収集・解析します。新入生は各自のタブレット端末でそのデータを参照しながら、実際にその場所に行き、植物の生育状況や土壌の湿度を目視で確認し、データの「答え合わせ(Ground Truth)」を行う役割を担っています。 しかし、現実はシミュレーション通りにはいきません。 春の嵐が過ぎ去った直後の湿気でセンサーの一部が誤作動を起こし、膨大なノイズデータが発生しました。多くの学生が、泥だらけになりながら機器の再調整に追われることになったのです。 自然はマニュアル通りにはいかない 情報理工学部に入学したばかりの田中ミナトさんは、当初この授業に懐疑的でした。 「プログラミングを学びにきたのに、なぜ長靴を履いて泥泥にならなきゃいけないのかと正直思っていました。でも、現場に行ってみて初めて、僕たちが画面上で扱っている『綺麗なデータ』が、いかに多くのノイズ除去と、現場の物理的な苦労の上に成り立っているかを痛感しました」 授業を担当する環境生態学の佐々木教授は、この「トラブル」こそが狙いだったと語ります。 「今の学生はデジタルネイティブで、検索すればすぐに正解が出ることに慣れています。しかし、自然界にはAPIもマニュアルもありません。不確実で、汚れていて、複雑です。その『ままならなさ』を肌で感じることこそが、エンジニアにとってもアーティストにとっても、最も重要な原体験になるのです」 高等部との予期せぬ化学反応 この授業には、もう一つのユニークな仕掛けがあります。それは、併設するTUSU高等部(High School)の理数探究コースの生徒たちが、ティーチング・アシスタント(TA)として参加していることです。 普段からこの森で昆虫採集や植生調査を行っている高校生たちは、森の「先輩」です。 「大学生の皆さんはAIの使い方には詳しいけれど、シジュウカラとヤマガラの鳴き声の違いは分からないみたいです。逆に私たちは、集めたデータをどう統計処理すればいいか教えてもらっています」 高等部2年の女子生徒は、泥で汚れた大学生の先輩に、双眼鏡の使い方を教えながら誇らしげに語りました。 大学という組織の壁を超え、年齢や専攻の異なる若者たちが「森」というフィールドで対等に学び合う。そこには、一方的な講義では生まれない有機的な交流が芽生えていました。 ウグイスの初音を待って プロジェクトの最終目標は、TUSUのシンボルでもある「ウグイス」の今年の初音(初鳴き)のパターンを、過去10年分の気象データと照らし合わせて解析することです。 誤作動していたセンサー群も、学生たちの手によって防水処理が見直され、ようやく安定稼働を始めました。 現在、キャンパスのサーバーには、毎分ギガバイト単位の「環境音」が蓄積され始めています。その中には、学生たちの笑い声や、議論する声、そして風に揺れる木々の音も含まれています。 「スマートキャンパス」とは、単にハイテク機器が並んでいる場所のことではありません。 テクノロジーを介して、人間が自然の声に耳を傾け、その複雑さを愛おしく感じる心を取り戻す場所。 泥だらけの新入生たちの背中は、TUSUが目指す新しい知性のあり方を、雄弁に物語っていました。 5月には、収集した音響データを元に、芸術工学部の学生がサウンド・インスタレーション作品を制作し、一般公開する予定です。 (文:TUSU教務部 リベラルアーツ教育センター)

  • 渋谷のコンクリートジャングルに「風の道」を通す 環境都市工学科とCS専攻の学生チームが提案した冷却アルゴリズムが渋谷再開発エリアで実装決定

    2025年3月10日 カテゴリー:社会実装・キャンパスニュース 春の訪れを感じさせる暖かな日差しが差し込む駒場キャンパス。しかし、環境都市工学部のラボ「Urban Eco-System Lab」の中は、真夏のような熱気に包まれていました。 本日、東京ウグイスシラギク国際大学(TUSU)は、本学の学生チーム「Team Zephyr(ゼファー)」が開発した都市微気候シミュレーションモデルが、渋谷駅周辺の大規模再開発プロジェクト「渋谷サクラステージ・ネクストフェーズ」の緑地計画における基幹アルゴリズムとして正式採用されたことを発表しました。 学生の研究が、コンペティションの受賞に留まらず、実際の都市インフラとして実装されるのは、日本の大学教育において極めて稀なケースです。 「体感温度マイナス3度」への挑戦 プロジェクトが始動したのは、2024年の4月。 「渋谷は谷底のような人混みで、夏場は息ができないほど暑い。これをエンジニアリングで解決できないか」 環境都市工学部3年のリーダー、長谷川ソウタさんの素朴な疑問がきっかけでした。 渋谷はその地形上、熱がこもりやすい構造をしています。チームが目指したのは、ビル風を「害」ではなく「冷却装置」として利用する逆転の発想でした。 しかし、都心の複雑なビル群を吹き抜ける風の動きを予測するには、膨大な計算リソースが必要となります。 ここで手を組んだのが、大学院情報理工学研究科(CS & AIコース)のメンバーでした。 彼らは、TUSUが保有するGPUクラスターを活用し、渋谷エリアのデジタルツイン(仮想空間上の双子)を構築。流体力学(CFD)シミュレーションとAIによる深層学習を組み合わせ、数万通りもの「植栽とベンチの配置パターン」を解析しました。 綺麗事だけでは、街は作れない しかし、道のりは決して順風満帆ではありませんでした。 昨年10月に行われたデベロッパーとの中間報告会。チームは自信満々で「最も冷却効率が高いプラン」を提示しましたが、返ってきたのは設計担当者からの厳しい言葉でした。 「君たちの計算は正しいかもしれない。でも、これでは人が歩けないし、メンテナンスコストがかかりすぎて実現不可能だ」 彼らが提案したプランは、冷却効率を優先するあまり、歩行者の動線を遮り、商業施設の視認性を損なうものでした。「都市工学は、数字合わせではなく、人の営みをデザインすることだ」。その本質を突きつけられ、チームは一度、解散の危機に陥りました。 文理の壁を超えた「最適解」 「一番効率的な形」ではなく、「人が心地よく、かつ涼しい形」とは何か。 チームは再び振り出しに戻りました。そこから彼らが行ったのは、計算機に向かうことではなく、実際に渋谷の街に出て、人の流れを観察することでした。 「1日10時間、スクランブル交差点や宮下パークで人の動きをカウントしました。そこで見えてきたのは、人は単に最短距離を歩くのではなく、『居心地の良い滞留(溜まり)』を求めているという事実でした」(メンバーの大学院1年・サラ・ウィリアムズさん) このフィールドワークで得た「人間行動データ」を、AIモデルに再学習させました。 風の流れを阻害せず、かつ人々が自然と集まりたくなる「植栽の配置」と、ビル壁面の素材が風速に与える影響(表面粗度)を再計算。 その結果導き出されたのが、今回採用された**「バイオ・ミミクリ(生物模倣)換気コリドー」**です。 植物の葉の並びを模した特殊なルーバーと植栽配置により、地上付近の風速を微増させ、体感温度を平均3.2度下げるシミュレーション結果が得られました。しかも、それは商業エリアの回遊性を20%向上させるという、経済的なメリットも付加されていたのです。 学生という枠を超えて 最終プレゼンテーションの日。 長谷川さんたちが提示した最終案に対し、かつて彼らを批判した設計担当者は、「これなら、渋谷の景色を変えられる」と深く頷きました。 今回採用されたアルゴリズムに基づき、2026年着工予定の広場エリアの設計が見直されることになります。 指導教員である環境都市工学部の高田教授はこう語ります。 「彼らが学んだのは、流体力学だけではありません。社会という複雑な変数の中で、諦めずに解を導き出す『粘り強さ』です。それこそが、TUSUが育てたい知性なのです」 3月、卒業シーズン。 先輩たちが巣立っていく中、長谷川さんたちのチームは既に次の課題に向かっています。それは、このシステムを目黒川流域の治水対策に応用するという、さらに壮大なプロジェクトです。 駒場の丘で生まれた小さな風が、東京という巨大な都市の熱を、静かに、しかし確実に冷まそうとしています。 (文:TUSU広報室 / 撮影:メディアアート研究会)

  • 墨田区の職人とAIが共鳴した日 情報理工と芸術工学の合同チームが伝統工芸の暗黙知を可視化する新システムを発表

    東京・駒場のキャンパスが、冷たい冬の空気を切り裂くような熱気に包まれました。 2025年2月12日から14日にかけて開催された、東京ウグイスシラギク国際大学(TUSU)の年度末成果発表会「TUSU Final Showcase 2024」。そのメインステージで、ある一つの学生プロジェクトが、来場した企業関係者や研究者たちの視線を釘付けにしました。 情報理工学部(MSc in CS & AI)と芸術工学部(BFA in Interaction Design)の学生による合同チーム「Project KISEKI(軌跡)」が発表した、**「江戸切子職人の熟練動作における『揺らぎ』のAI解析と、ハプティクス(触覚)技術を用いた技能継承システム」**です。 伝統工芸が抱える「継承」の危機 プロジェクトの発端は、芸術工学部の学生がフィールドワークで訪れた、東京都墨田区にある老舗江戸切子工房での会話でした。 「今の若い子に『ここをもう少し深く削れ』と言っても伝わらない。私の手には数十年の感覚があるが、それを言葉にするのは難しいんだ」 工房の親方は、そう嘆いていました。 いわゆる**「暗黙知(Tacit Knowledge)」**の問題です。 日本の伝統工芸を支えてきた職人たちの高度な技術は、マニュアル化できない身体感覚に依存しています。少子高齢化が進む中、この「言葉にできない技術」をいかに次世代に残すか。それは工芸の世界だけでなく、日本のモノづくり全体が直面している深刻な課題でした。 異なる言語を話す学生たちの衝突 この課題に対し、TUSUの強みである「文理融合」のアプローチが試みられました。しかし、道のりは決して平坦ではありませんでした。 プロジェクトリーダーを務めた情報理工学部修士2年の佐藤ケンジさんは、当時の苦労をこう振り返ります。 「最初は、職人さんの腕に高精度のモーションセンサーを取り付け、角度や速度をデータ化すれば再現できると甘く考えていました。しかし、得られたデータをロボットアームに入力しても、ガラスは無残に割れるか、光の屈折が鈍い、魂の入っていない作品にしかなりませんでした」 一方で、芸術工学部のメンバーは「数値」ではなく「感覚」を重視します。 「職人さんが大切にしているのは、正確な角度だけではなく、ガラスの厚みやその日の気温に応じた『呼吸』のような微調整なんです。エンジニアチームが出してくるグラフには、その『揺らぎ』がノイズとして処理されてしまっていました」(芸術工学部4年・高橋リエさん) 夏休み期間中、チーム内の雰囲気は最悪でした。データを信じるエンジニアと、感覚を信じるデザイナー。双方が互いの専門用語を理解できず、プロジェクトは一時、空中分解寸前まで追い込まれました。 ブレイクスルー:AIが発見した「美しいノイズ」 転機が訪れたのは、11月。研究室のGPUクラスターを用いた深層学習モデルが、あるパターンを発見した時でした。 これまで「エラー」や「手ブレ」として除去していた微細な振動の中にこそ、ガラスの表面を最も美しく輝かせるための特有の周波数が隠されていたのです。 職人は、無意識のうちにガラスの硬度を感じ取り、ミクロン単位で切削圧力を「揺らして」いました。AIはこの「美しいノイズ」こそが熟練の正体であると突き止めました。 チームはこの解析結果をもとに、視覚的なグラフではなく、手袋型のデバイスを通じて振動(ハプティクス)で初心者に「正解の削り心地」を伝えるシステムを開発しました。 実際にこの手袋を着用してガラスを削った体験者は、「まるで誰かに手を添えられて導かれているような感覚」と驚きの声を上げました。 駒場から、世界の「マイスター」へ 発表会のデモンストレーションでは、実際に墨田区の親方が登壇しました。学生たちが開発したシステムを見て、親方は少し照れくさそうに、しかし確かな満足感を浮かべてこう語りました。 「まさか、わしの『勘』がこんなふうに画面に映るとはな。これなら、孫にも教えられるかもしれない」 この研究発表は、会場の投票によって選ばれる「TUSU President’s Award(学長賞)」を満場一致で受賞しました。 審査員を務めた大手電機メーカーの役員は、「単なるデジタルアーカイブではなく、人間の身体性を拡張する『人機一体』の技術として、医療やスポーツ分野への応用も期待できる」と高く評価しました。 「Project KISEKI」のメンバーは、卒業後もこの研究を継続し、大学発ベンチャーとしての起業を予定しています。彼らの視線は、すでに江戸切子だけではなく、陶芸や漆塗り、さらには外科手術の手技など、世界中の「失われゆく技術」に向けられています。 テクノロジーは、伝統を破壊するものではなく、伝統に新たな光を当て、未来へと繋ぐための「器」となる。 駒場の丘で生まれたこの小さな革新は、TUSUが掲げる「伝統と革新の共生」という理念が、単なるスローガンではないことを証明しました。 (文:TUSU広報室)